水道鉛管

 

不動産の取引をこなしていると、様々なトラブルや困りごとが発生してくるものです。

こうした厄介事の中には、「土地を掘ってみたら他人の配管が通過していた」「地下水が湧き出して来た」など、通常の方法では回避不能なものも存在しますが、その中にはちょっとした気配りや経験値によって、発生を未然に防げる場合も少なくありません。

そこで本日は、そんな発見可能なトラブルの中でも発生件数が意外に多く、後々大きな問題となりかねない水道管絡みのネタを、「水道鉛管トラブルに関する体験記をご紹介!」と題してお届けしてみたいと思います。

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鉛管トラブル発生!

この事件が発生したのは、私が売買部門に異動して間もなくの頃であり、エンドユーザーへの仲介をメインに行っていた時期のことでした。

問題の発端は、以前に分譲マンションの仲介をさせてもらったお客様からのご紹介で、ある老婦人の売り案件を担当させて頂いたことに始まります。

こちらのご婦人、25年程前にご自身が所有する土地で戸建の建て替えを行い、ご主人と仲睦まじく暮らしていたとのことですが、数年前に旦那様が他界。

その後も奥様お一人での生活を続けておられましたが、ここに来て体調が優れないとのことで、自宅を売却した上、息子さん夫婦とのご同居を決意されたといいます。

なお既にお引越しも完了していましたので、後は物件を売却するだけという、手の掛からない状態となっていました。

今時ならば、こうした築年の経過した物件の殆どは建売屋さんと呼ばれる分譲業者に買い取られ、建売として再販売されることとなるのが定石ですが、当時は建売屋さんの買取価格もそれ程高くはなく、エンドユーザーに向けての販売活動を行うことになります。

通常であれば、レインズなどを駆使して購入希望者を募るところなのですが、実はこの案件を請け負った時から「私の手持ちのお客様にピッタリのご条件的だな」と考えており、まずはその方に情報を流してみました。

こちらのお客様、まだお若いご夫婦の方なのですが、既に3人のお子さんをお持ちであり、中古マンションを探していたものの「何時も大騒ぎの子供たちのことで、近隣とトラブルにならないか?」との心配から、物件探しの対象を戸建に変更。

但し、当然戸建ての方が購入価格は高額となるため、築年が古い中古戸建を買わざるを得ない状況でした。

今回の物件は老夫婦がお住いだったということで、建物自体の傷みもそれ程ではありませんから、贅沢を言わなければクロスの張り替えとクリーニング程度で充分に生活は可能なはずです。

そこで早速、このお客様に物件を見て頂いたところ、一発で気に入ったとのことで、一気に契約までお話を進めることが出来ました。

後は「決済・引渡しの日を待つだけ・・・」、そんなのんきなことを考えていた私に、突然ある不安が頭をもたげて来ます。

ちょうどその時、報道番組を見ていたのですが、その放送の中で某国にて発生した環境汚染の話題が報じられていました。

「川から検出された汚染物質は、鉛やカドミウム・・・」、そんなテレビの声を聞いている内に、『あの物件、水道管に鉛使ってないよな・・・』という不安が頭をよぎります。

翌日、慌てて水道局に行き、再調査をしてみたところ、敷地内のメーター廻りの一部に鉛管が使用されていることが発覚するのでした。

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トラブルの後始末

ご存じの通り、鉛は人体に蓄積することにより、様々な害を及ぼす危険な重金属となります。

「そんなものが水道管に使われているの?」と思われる方も多いと思いますが、実は50年くらい前までは、極普通に水道管として使用されていたのです。

もちろんその後、人体に悪影響があるということで、平成7年に完全使用禁止となりましたが、実は当時の水道管がそのまま使用されていることも少なくありません。

今回の取引を行うのにあたり、当然埋設管の調査は行っていたのですが、忙しさにかまけて、同僚に水道管調査を任せてしまっていました。

当然、道路に引かれた本管や、敷地に引き込むための引き込み管については、同僚がしっかりと「鉛管が使われていない」ことを確認してくれていたのですが、今回問題となったのは水道メーターより先の部分となります。(メーターから建物までの間)

この部分に関しても、もちろん水道局にヒアリングすることにより、使用されている管の種類などを確認することは出来るのですが、個人情報となるため委任状の提出を求めて来る行政も少なくありません。

こうした事情から、メーター廻りの配管まで調べる不動産屋さんは少ないのですが、後々鉛管が使用されていることが発覚し、トラブルとなるケースも多いため、絶対に手の抜けない要注意ポイントとなっているのです。

もちろん事前にこの事実が判っていれば、売主・買主どちらの負担で水道管の更新工事を行うか等の相談も出来ますが、既に契約も終わり、引渡しを待つばかりの状況ではどうにも出来ません。

本来なら売主・買主に謝罪をした上で、今後の方向性を決めなければならのですが、買主さんも予算がギリギリ、売主さんも体調が悪いとのことですから、正直これからこの話を持ち込むのは気が引けます。

そこで知り合いの水道業者に見積もりを作成してもらったところ、工事費用は3万円程度とのこと。(鉛管の範囲は極一部でした)

「ここは私が責任を負えば・・・」ということで、売主さんに工事の承諾を頂き、私のポケットマネーで工事を完了してしまいました。

もちろん、買主にも工事を行ったことは報告しましたが、特に問題となることもなく、ご家族5人で楽しく新生活を始めることが出来たようです。

今回は少々懐を痛めることとなりましたが、無事に取引が終えられたことを心より嬉しく思いました。

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鉛管トラブルまとめ

さて、ここまでが私が経験した鉛管に関するトラブル体験記となります。

たまたま見ていたテレビで鉛管の存在を疑わなければ、その後とんでもない問題に発展して可能性もあり、今思い出しても背筋に寒いものが走る事件でした。

また、お客さんと揉める以上に「健康に害を及ぼす設備を、そのまま引き渡してしまうところであった」というは非常にショックな出来事であり、以来どんなに忙しくても物件調査は必ず自分で行うようにしています。

なお、今回の物件は築25年とそれ程古い建物ではなかったのですが、どうやら建て替えを行った業者がメーター廻りの配管をそのまま新築に流用してしまったのが、問題発生の原因である様子。

工事を建築屋さん任せにしていると、時折こうしたトラブルが発生しますで、建て替えなどをお考えの方は、是非ご注意頂きたいところです。

ではこれにて、水道鉛管トラブルに関する体験記を締め括らせて頂きたいと思います。