土地と地下水

 

一時期、世間を非常に騒がせていたのが、東京築地市場の移転先である豊洲での地下水問題です。

この件では土壌汚染との絡みがあった上、謎の地下空間が発見されるなど様々な方向に問題が派生して行きましたが、普段は聞き慣れない「地下水」という存在に改めて気付かされた方も多かったのではないでしょうか。

実は、建築や不動産の仕事をしていると、時折この地下水に非常に頭を悩まされることがあるものです。

そこで本日は「土地と地下水に関するトラブル体験記をお届け!」と題して、私が実際に体験した地下水問題をレポートしてみたいと思います。

スポンサーリンク

 

地下水事件勃発

この事件が勃発したのは、今から数年前の真冬のことでした。

当時の私は、建売用地の仕入れや、収益物件の買取の仕事をメインにしていたのですが、「マイホームを購入したい」というお客様がご来店されれば、普通に客付けの仕事もこなすのが常でした。

そんな毎日を送るある日、私の店舗にあるお客様がご来店されます。

お客様のスペックは30代のご夫婦で、マイホーム建設の為に土地で購入出来る物件をお探しであるとのこと。

以前の記事「建売会社を取り巻く現状について」でも申し上げましたが、現在の不動産業界は「建売屋さん」と呼ばれる戸建分譲業者同士が、土地の情報を巡って激しい争奪戦を繰り広げています。

こうした事情により、土地の値段は現在も釣り上がる一方で、今や「一般のお客さんが購入する土地価格より、建売業者の土地買い取り価格の方が高額である」という逆転現象が起こっている程なのです。

よって不動産市場では、建売物件こそ多く流通しているものの、売地の情報は殆ど存在せず、例えあったとしても「売主の都合により売却希望価格高過ぎる物件」など、何かしら問題があるものが殆どという状況となっています。

そして今回のお客様は「これまで何件も建売物件を見て来たものの、どうして自分の好みに合う家が見付からず、土地を購入して注文住宅で建設を行うのが希望」とのことでしたので、こうした業界の現状を包み隠さずにご説明することにしました。

なお通常であれば、この説明を聞いて土地購入を諦める方が多いのですが、このお客様は「相場以上の価格でも良いから、土地が欲しい」とおっしゃられており、その購入意欲は並々ならぬものがある様です。

もちろん建売屋さん以上の金額で土地を購入する覚悟があるならば、物件が無いことはありませんので、最近ではすっかり珍しくなった土地購入希望のお客様との物件探しがスタートすることとなりました。

まず手始めに、レインズやアットホームといった不動産業者同士の売物件情報共有媒体に掲載された情報をご紹介してみますが、インターネットなどの情報には常にアンテナを張り巡らせておられるとのことで、興味のある物件は見付けられず。

そこで建売用地仕入れのための営業活動で入手した情報の中から、一般の方でも買えそうな物件のご紹介を開始します。

そして探し始めること1ヶ月、ついに是非現地を「見に行ってみたい」という物件をご見付けることが出来ました。

物件のスペックは、駅から徒歩10分程の川沿いにある40坪の整形地。

通常のであれば、建売が2棟建つ現場なのですが、やや売主の希望価格が高く、買い手が見付からずにいる物件でした。

因みに物元(ぶつもと)と呼ばれる売り主側の不動産業者も知り合いでしたので、事情を話してみたところ、「一般のお客でも構わない」とのことでしたので早速現地をご案内してみます。

するとこのお客さん、一目で物件を気に入り、契約・決済とお話はトントン拍子にお話は進んで行くこととなり、無事に引渡しも完了。

決済の際には「来月から建築に掛かります!」と笑顔を見せていた買主さんでしたが、程なくして怒りに震えた声でクレームの電話が入って来ます。

とりあえずは「現地を確認させて下さい」と伝え、営業車で現場に急行することにしましたが、購入した時は雑草だらけの更地だった場所には、なかなかに立派な池が出来上がっていました。

スポンサーリンク

 

解決に向けて

あまりの光景にしばらく放心状態となってしまった管理人でしたが、何とか平静を取り戻し、「まずは経緯を聞かせて下さい」と買主さんと建築を請け負ったハウスメーカーの現場監督にお話を伺います。

その説明によれば、建築に先立ち地盤調査を行ったところ、調査を行った際の穴に水が溜まっているのを作業員が発見。

買主にその旨を知らせた上、重機で地面を掘ってみたところ、40cmも土を掘り返すと地下水が湧き出して来るという状態であったといいます。

私も試しに他の場所をスコップで掘らせてもらったのですが、確かに30cm~40cmも掘り始めると、土は湿り始め、しばらく放置していると水たまりが出来てしまいます。

「見えない場所に水道管などがあり、漏水した水が染み出しているのでは」とも疑ってもみましたが、そんな様子はありません。

そこで隣接するお宅に聞き込みをしてみたところ、「以前から、こうした現象が時折起こる地域である」との衝撃的な証言を聞かされてしまうのでした。

流石に「これはマズイ」ということで、元付け業者(売主側の不動産業者)に連絡を入れ、二人で現地を確認した上で、売主さんと今後の対応を協議することになります。

売主さんはこの地域では少々名を知られた地主さんであり、かなりの資産をお持ちの方ですから、今回のトラブルで賠償金が発生してもそれ程のダメージは受けないはず。

しかし、こうした方に限ってお金の支払いは渋い傾向にありますので、慎重にお話を進めて行きます。

ところが、話が本題に差し掛かると穏やかだった表情は豹変。(当たり前でしょうが)

「自分は昔、この土地で畑をやっていたが、地下水が出てきたことなど一度もない」、「言い掛かりだ!」と話は良くない方、良くない方へと進んで行きます。

これ以上関係が悪化するのも不味いので、一端その場をお開きとして、専門家の意見を聞いてみることにしました。

元付けの業者さんと手分けをして、建築屋さん、地盤改良屋さんなど、様々な方々からお話を聞いてみましたが、地下水でのトラブルは決して少なくはない模様。

また、地下水の水位は数か月で変動することもあれば、数年のスパンで変わることもある上、川の近くともなれば干潮・満潮など時間帯によっても大きく水位が変わるといいます。

そして、こうした土地に通常の基礎で建築を行えば、建物の痛みは早く、後々大きな問題に発展することも少なくないようです。

解決策としては、土地自体に地下水が入り込まない様な工事を行うという方法もありますが、成功する確率は低く、建物の基礎の下に空間(地下ピット)を設けて、そこが地下水で満たされれば、自動で排水を行う装置を付けるのが一番確実な方法であると言います。

これらの意見やアドバイスを報告書にまとめ、再び売主さんとのお話し合いを行うことになりました。

売主さん自体もご自分で色々調べていたらしく、今回は激高されることもなく、建設的なお話し合いをすることに成功します。

問題は購入した側の反応なのですが、こちらも土地自体は非常に気に入っておらるとのことで、地下ピットやポンプの設置などに掛かる費用を売主に負担してもらえれば、この件は不問に帰すとおっしゃって頂きました。

こうしてどうにか大事には至らず、トラブルを解決することが出来たのです。

スポンサーリンク

 

地下水問題まとめ

さて、ここまでが私の経験した地下水によるトラブルの顛末となります。

地下水を防ぐため「地下ピット」を作るなど、正に豊洲市場で起こった問題と同じような経緯ですよね。

こうしたトラブルを経験していたので、豊洲の事件の際も「地下空間を作るのは当たり前なのに・・・」と思いながら報道を見ていたものです。

しかし、こうした地下水のトラブルは一般の方が土地を購入した際にも起こり得ることですから、物件を買う際には是非ご注意頂ければと思います。

また今回のトラブルも近隣の方にヒヤリングの調査を行っていれば、或いは事前に回避が可能であったかもしれませんから、この教訓を生かして取引の際の現地調査では近隣への聞き込みを強化することにしました。

こうしたトラブルを経験すると、不動産屋を続けるのが少々怖くもなって来ますが、これからも頑張って行きたいと思います。

ではこれにて、土地と地下水に関するトラブル体験記を締め括らせて頂きたいと思います。