賃貸原状回復トラブル

 

近年、賃貸物件の管理を行っていて、急増しているように思えるのが原状回復工事に伴う、敷金返還に関するトラブルです。

一昔前までは、不動産屋さんに言われれば、言い値で原状回復費用の支払に応じる入居者さんが多かったようですが、インターネットが普及し、自由に情報を得られる現在では、すんなり請求金額を受け入れてくれる方も少なくなりました。

確かに不動産屋さんの中には、敢えて法外な修繕費を入居者に突き付け、工事業者からバックをもらおうと考えている者もおりますから、これはこれで結構なことなのですが、

中には正当な請求であるにも係らず、聞きかじった中途半端な知識で「不等請求だ!」と言い張る方もおられるので、管理会社としては非常に頭の痛いところです。

そこで本日は、管理人が実際に経験した賃貸原状回復トラブルの体験記をお届けしてみたいと思います。

では早速、原状回復トラブルレポートを見て行きましょう。

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問題ある借主との退去立会い

今回のお話の舞台となる物件は、私が管理を担当している築18年、木造2階建ての1DK、世帯数10戸のアパートです。

なお管理を請け負ったのは数年前からであった為、入居者の殆どの方とは顔も合わせたことがないという状況でした。

そんな中、2階の一室の入居者から退去予告の連絡が入ります。

賃貸管理の業務をしていれば、初対面の入居者と退去立会いをすることはザラにありますが、今回の入居者は少々訳で違いました。

入居中から、それ程迷惑を掛けていない隣室の入居者の生活音が煩いとクレームを入れて来たり、入居後数年なのにも係らず、大家さんの負担で畳の表替えをするよう要望を出して来るなど、「少々困ったちゃん」なお方だったのです。

「これは一筋縄では行かないのでは・・・」と想いながらも、退去立会いに臨みます。

私の会社では、退去の業務を少しでも簡略化するために、立会い時にリフォーム業者を同伴させるようにしており、その場で見積もりを完成させ、敷金返還の交渉まで、その場でやってしまうのが流儀です。

そしてこの時も、リフォーム業者さんと共にお部屋を訪れていました。

約束の時間となったので、チャイムを押しますが入居者は不在。

慌てて携帯電話に連絡を入れてみると、「30分遅れる」とのことでした。

『遅れるなら電話くらいして来い!』内心そんな文句を言いながら、嫌な予感が増大して行くのを感じます。

そして入居者が現れ、玄関を開錠しますが室内はなかなかに荒れたご様子。

但し、全体的に汚れてはいるものの、破損などは少なく、タバコのヤニが染み込んだクロスの処理が交渉のメインとなりそうです。

契約書上は、「タバコによるクロスの汚損は全額、借主負担」と謳ってありますから、問題はないはずなのですが、これを説明しても入居者はなかなか納得してくれません。

「テレビでは払わなくて良いと言っていた!」、「クロスの交換費用は賃料に込みと考えられるはずだ」、「オレは3年間で、200万円以上の賃料を払っているんだ!」など、中途半端な知識で駄々をこね続けます。

『こいつ、面倒くさい奴だ!』そう確信した私は、一気にまくし立てることにしました。

「でも、契約した時には、タバコによる汚れが入居者の責任であることを承諾していましたよね」

「大家さんの立場になって考えてみて下さい、自分が同じことを言われて納得出来ますか?」

「約束を守らないのって、人としてどうなんですか?仮に自分の子供がここに居ても、同じことが言えますか?」

この連続攻撃に遂に入居者も折れ、クロス交換費用を負担することに同意するのでした。

『とりあえず、何とかなった・・・』、そう胸を撫で下ろし、会社に戻る管理人でしたが、翌日には入居者からの反撃が始まります。

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借主の反撃

最初の反撃は、本人からの電話連絡でした。

借主曰く「消費者センターに連絡したら、やはりクロスの交換代金は払わなく良いと言われた」とのこと。

そこで私は「そんなことがあるはずがない、クロス交換の特約があることをちゃんとお話ししたのですか?」と問い返すと、返事に詰まってしまいます。

そこでダメ押しとばかりに「消費者センターの担当者名を教えてもらえれば、私が直接相談しますよ!」と伝えると、電話が切れてしまいました。

 

その後、1週間程は何事もありませんでしたので、納得したのかと思っていましたが、突然、私の会社に内容証明が届きます。

差出人は入居者本人であり、内容的には「壁紙交換費用の支払には承服しかねる」とのこと。

思わず頭に来てしまったので、お返しにとばかり内容証明を送り返し「原状回復費用の請求金額が正当なものである理由」を書き連ねます。

 

そして再び、沈黙すること1週間。

今度は、弁護士を名乗る者から私宛に電話が掛かって来ます。

流石に弁護士から電話が入ると少々ビビりましたが、とりあえず話を聞くことにしました。

弁護士曰く、「判例などを見れば今回のタバコの汚損による壁紙の貼り替えを求める特約は、『借主に極端に不利である』ことを条文内で説明していないので無効である」とのこと。

確かにこうした解釈があることは私も知っていましたが、個々のケースにより判断は別れますから、本当に無効であるかを確かめるには裁判に持ち込むしかありません。

しかし工事費用は僅か数万円のことですから、調停や裁判になるのは、入居者だって嫌なはずです。

そこで、こちらの言い分を伝えると共に、どんな条件なら納得出来るのかを問いただしてみます。

そして弁護士の言い分は「東京ルールによればクロスの償却期間は6年とされているので、どんなに費用を出せても住んでいた3年分が上限である」とのこと。

また話のニュアンスから、「正直こんなつまらない案件は、ごめんこうむりたい」という意思が何となく伝わって来ます。

弁護士も依頼を受けた以上、何か「手土産」がないと入居者を納得させられないのでしょう。

そこでオーナーさんに連絡を取り、壁紙の交換費用を半額にすることで、納得してもらうことにしました。

こうして裁判になることはなくトラブルは解決されましたが、私的には何となく「負けた感」があり、未だに苦い思い出です。

ただ、入居者も弁護士を使った以上、無料とは行かないでしょうから、もしかするとおとなく全額を負担した方が割安だったのかもしれません。

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原状回復トラブルまとめ

さて、ここまでが私の原状回復トラブル体験記となります。

実務をされている方の中には、これ以上のヘヴィなトラブルを経験されている方も多いことと思いますが、こうした案件は実に後味が悪いものですよね。

私も問題が解決した後、「立会いの時にもう少し、下から丁寧にお願いしていれば面倒なことにならなかったのでは・・・」とも思いましたが、相手に強気に出られるとなかなかそうも出来ず、自分の未熟さを感じてしまいます。

敷金返還に関するトラブルは、どんなに揉めても収益に繋がるものではありませんから、意地にならず「落とし所」を正確に見極めることが、何より大切なのかもしれません。

ではこれにて、賃貸原状回復トラブルの体験記を締め括られて頂きたいと思います。