
分譲マンションは、戸建てよりも手軽に購入が可能であり、維持管理も楽チンというイメージをお持ちのことと思います。
しかし、多くの所有者が存在する物件だけに、一度組合の運営などが「こじれ」てしまうと、その後処理は非常に困難なものとなるという側面があることも、紛れのない現実です。
そんな分譲マンションの弱点を、管理人が嫌という程に思い知らされることとなったのが過去に経験した「自主管理マンションの管理組合再生プロジェクト」であり、前回の記事にてその体験記の前編を、そして本日は後編をお届けしたいと思います。
なお、前編「自主管理マンションを復活させろ!管理組合再生プロジェクト前編」をお読みでない方は、こちらをご覧になられてから、本記事をお楽しみ頂ければ幸いです。
では、マンション自主管理再生への道のりを見て行きましょう。
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前回までのあらすじ
知り合いの不動産屋さんの紹介により、分譲当時から管理組合さえ立ち上がっていない自主管理マンションの5部屋を購入した管理人。(買ったのはあくまでも務めている会社ですが)
20戸という小規模なマンションながら、30年間まともなメンテナンスが行われていない建物の痛みは激しく、一刻も早く組合の建て直しを行わなければなりません。
当初は管理会社に全てを委託してしまおうと考えいましたが、その見積もりは法外な金額であり、自力で組合を復活させる以外に道はないようです。
そこで「一部屋に付き、月額5000円の管理費と8000円の修繕積立金の負担をお願いしたい」という組合再生プランを作成し、各区分所有者を説得して回ることにします。
区分所有者たちとの邂逅
今回の自主管理マンションは、元々が投資用として分譲された物件でしたので、購入者が自分で住んでいるお部屋は少なく、所有状況は下記の通りとなります。
- 私の会社/5部屋
- 投資家Aさん/3部屋
- 投資家Bさん/5部屋
- 自己居住所有者/7部屋
もちろん全員に声を掛け、管理組合の復活を目指さなければならないのですが、まずは議決権も大きく、話も通じそうな投資家A・Bに当たりを付けて行くのが得策でしょう。
既に登記簿謄本を頼りに、A・Bには手紙で「私の会社が5部屋を購入した旨、そして管理組合の再生を行いたい意向がある」ことは伝達済みです。
そして幸いなことに、手紙を読んだAさんからはお電話まで頂いておりましたので、すんなりお会いすることが出来き、提示した「一部屋月額5000円の管理費と、8000円の修繕積立金を徴収」というプランにもご賛同を頂けました。
「これはラッキー!」と、Bさんからの連絡も待ってみましたが、流石にそこまで世の中は甘くない模様。
そこで止む無く、アポなしの自宅訪問を敢行しますが、2~3回訪れてもご不在の様子です。(登記簿謄本には住所しか記されていないため、こちらからの電話連絡は出来ない)
それでも諦めず根気良くご自宅に通っていた所、ついにBさんを捕まえることが出来ました。
そして、これまでの経緯をお話しすると共に、「マンションの資産価値を維持していくには、組合の復活が必要不可欠である」旨を伝えますが、Bさんは自分の家賃収入が管理費等によって目減りしてしまうことに明らかな不快感を示しておられます。
但し、ここで無理に食い下がっても「面倒なことになるだけ」という予感がしましたので、この場は一端撤退することにしました。
確かに5部屋を抑える投資家Bさんにプランへの賛同を頂けないのは「なかなかの痛手」ではありますが、ここは残りの自己居住所有者7人(部屋)を調略するのが先決と考え、一軒一軒訪問して打ち合わせを進めて行きます。
自己居住所有者の中には、朽ちて行くマンションの未来に不安を感じて快く管理費等の支払いに同意してくれる方もおられましたが、これまで固定資産の支払いのみで済んでいたところに、出費を迫られたことに憤慨し始める方も少なくありませんでした。
しかし、一人でも多く賛同者を増やさなければお話は前に進みませんので、何度も訪問して組合再生の必要性を説いて回ります。
そして遂に、7人中の5人が私の管理費・修繕費案に賛同してくれることとなりました。
これにより賛成派13部屋、反対派7部屋。
ようやく「お話がまとまりそうな手応え」がじんわりと漂い始めます。
そこで組合員たちに声を掛けて、初めての総会を開催する運びとなりました。
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初めての総会
参加者の人数を考えれば「予定が合う日なんてあるのか?」と心配していたのですが、ラッキーなことに全員が出席できる日程を確保出来たため、私の会社が所有する部屋にて、いよいよ総会が始まります。
まずは出席者全員に改めて資料を配布し、今の建物の状況が如何にマズイものであるかを一から説明します。
そして「このままでは売却も出来ない、数年後には多くの部屋で雨漏りが発生し、大きな地震がくれば倒壊する恐れもある・・・」等々の事情を、熱く熱く語って行きました。
そしていよいよマンション再生に不可欠な「一部屋月額5000円の管理費と、8000円の修繕積立金の負担をお願いしたい」という案に対して、「決」を執ることにします。
実はこの案に反対していた、5部屋を所有する投資家Bさんには事前に連絡を入れて、「賛成派が13、反対派が7であるという状況」を伝えておきました。
そして「総会の場で多数決となれば管理費5000円・修繕積立金8000円というプランが可決されることとなるが、組合再生のスタートから数で押し切る様な手法は避けたいと思っている」旨をお話し
「管理費・修繕費それぞれ1000円ダウンとなる管理費4000円・修繕積立金7000円という妥協案にて、賛同派に回ってはもらえないか?」という提案を持ち掛けていたのです。
また当然、他の賛成派の方々には「Bさんに対する提案」の内容を伝えておきましたから、後々トラブルとなる心配もありません。
こうして迎えた評決の結果は、予定通り「賛成派が13、反対が7」となりましたが、ここですかさず「いくらなら納得してもらえますか?」と反対派の方々に話を振ります。
突然の問い掛けにBさん以外の反対派はオドオドするばかりですが、ここでBさんが「1000円づつダウンなら、私は払う!」と宣言。
これで一気に「賛成18、反対2」という構図となり、反対派の2名もついに軍門に下ります。
こうして無事に管理費・修繕積立金の金額も決まりましたから、後は他の分譲マンションから拝借して来た規約の内容を叩き台にして管理規約を制定、これでどうにか最低限の形を整えることが出来ました。
最後の仕上げに、複数の部屋を持つAさんかBさんに「理事長を押し付けられれば!」と考えていたのですが、全会一致で私が指名されることになってしまいます。
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自主管理の難しさ
こうして晴れて理事長となった私ですが、この後がまたまた大変。
何と言っても、これまで停止していた組合には一円のお金もありませんから、当初数年は一切修繕工事をすることが出来ませんでした。
そして、管理費・修繕費の滞納者の出現に、予想通り発生した雨漏りの応急処置など、問題は正に山積の状態です。
但し、激安で購入した5部屋はガンガン収益を上げてくれていますので、この点だけは救いとなりました。
そして長い時間を掛けながらも「外壁塗装」に、「屋上防水」など、お金が溜まる毎に工事を行い、今では『腐りかけていたマンションとは判らない』程の復活を遂げているのです。
さてここまでが、私が経験した自主管理マンションの管理組合再生プロジェクトの概要となります。
今回の様なお話は非常にレアなケースだとは思いますが、相続などで建物を区分登記したことにより、朽ち果てている物件も少なくありませんので、私が行ったのと同様の手法で収益物件を入手するのも面白いかもしれません。
「人の嫌がる仕事ほど儲かる!」、それが今回の仕事が教えたくれた最大の教訓であったように思えます。