建売施工管理

 

不動産関連の業種の中でも少々異色な存在とされているのが、建売を分譲する「建売屋さん」と呼ばれる業態です。

そして同業者からも「建売屋さんの仕事はどんなものなのか?」なんて疑問をよく投げかけられますので、私が初めて経験した建売事業の流れを体験記風の記事にしてみることを思い立ちました。

前回の「建売の土地仕入から、建築開始までの流れをレポートします!」の記事では、仕入れから物件購入までの流れをご紹介させて頂きましたが、今回はその続きとなる古家の解体、地盤改良の流れをレポートさせて頂きたいと思います。

では、建売施工管理の知恵袋を開いてみましょう。

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近隣挨拶と打合せ

さて無事に物件を購入した後は、いよいよ建築作業に向けての準備を開始します。

まず行うべきは、現地に建っている古家の解体作業と、確定測量の際に発覚した「お隣の敷地との真ん中に入っているブロック塀」の処理でした。

とりあえずは、お挨拶用のタオルを持って隣近所へ「解体と新築のご挨拶」に向かいますが、『周りにどんな人間住んでいるか』が全く判らない状況ですから、ここは少々緊迫する場面です。

そして、一軒一軒ご挨拶を済ませて行きますが、皆様の反応は「いくらで買ったの?」「工事は何時から何時までやるの?」「建設反対!」など、決して好意的なものではありませんでした。

初めて担当する現場にも係らず、スタートから浮かない気分になってしまいましたが、ここは気を取り直して、重要な目的の一つである敷地境の真ん中にブロック塀が建っているお宅にお声を掛けます。

「今度工事をすることになった●●不動産です。ご迷惑をお掛けします!」と声を掛けたところ、笑顔で「ご丁寧にありがとうございます」と言って下さる初老の男性の対応に、少しだけホッとする私。

そして、これはチャンスだとばかりブロック塀の説明を始めます。

実はこの敷地境のブロック塀、お互いの土地に跨っているものの、元の売主さんも「自分のものなのか、お隣のものなのか判らない」という厄介な代物です。

但し、建売の分譲業者としては「購入者に納得の行く説明が出来て、後々トラブルにならなければ良い」だけですから、『ブロック塀の所有権の所在』さえ明らかになれば問題はありません。

例えば、お隣がブロック塀を「自分の持ち物だ」と言うのであれば、こちらの敷地に飛び出している「越境物」という扱いになりますし、

反対に「お前の持ち物だ」言われれば、こちらからお隣に対して飛び出している「越境物」という扱いになるだけです。

そして「どちらの持ち物とも決められない」と言いうのであれば、改めて「共有物」という扱いにしてしまうことも可能でしょう。

こうして所有権の所在さえ確定してしまえば、後は「今後の塀の扱いを定めた覚書」を取り交わして、建売の購入者にその内容を引き継ぐのみとなります。(越境トラブルに関する詳細は「不動産・境界越境問題について」の記事を参照下さい)

そこで早速、「ブロック塀の扱いについて取り決めがしたい」旨の説明を始めたのですが、この初老の男性には趣旨がなかなか理解して頂けないご様子。

結果的には「いくら隣りの土地を買ったからと言って、ブロック塀が誰のものかを、私とあんただけで決めてしまうのは乱暴だ!」と、意味の判らない理由を述べながら、怒り出してしまう始末でした。

『いやいや、あんたとオレ以外、誰が決めるんだよ!』と心の中でツッコミながらも、これ以上話が拗れないよう「また改めてご相談に伺います」と一端その場を離脱します。

なお後日、この爺さんの息子さんから電話が入り、「共有」ということで決着が付きました。

初っ端からグダグダな展開となってしまいましたが、一応近隣との調整は整いましたので、いよいよ解体作業が開始されます。

 

解体作業

そしていよいよ迎えた解体当日、先輩から紹介してもらった解体屋さんが早朝から現場に集結し、一気に解体作業が開始されます。

まずは建物に残された荷物を運び出す作業が始まりますが、敷地内に先日まで無かった古いテレビや壊れた電子レンジが投棄されているのを発見。

おそらく、解体の噂を聞き付けた近隣の人間が捨てに来たものと思われますが、解体屋さんの監督が無料で処分してくれるとのことで、この件はクリアー。

その後は建物本体の解体が始まりますが、一日立ち会っている訳にも行かないので、現場を離れたものの、間もなく現場監督からのお呼び出しを受けます。

慌てて戻ってみると、近隣の方から解体の音が五月蠅いとのクレームでした。

「解体作業は短期間ですから・・・」と何とか宥め、再び作業が開始されます。

以降はあまり問題もなく時間が過ぎて行きますが、工事開始5日目、ほぼ更地になった頃に再び近隣のクレームでの呼び出しが入ります。

「また近隣の方から音が五月蠅いといった苦情かな・・・」と冷や冷やしながら現場に向かうと、更に悪い事態が私を出迎えてくれました。

それは隣接するお宅の奥様からの指摘であり、解体工事の振動で、自分の建物の外壁がひび割れを起こしたというのです。

「これは困った」とダラダラ冷や汗を掻きながら苦情に耳を傾けていると、そこに出掛けていた解体屋さんの現場監督が戻って来ました。

そして現場の職人から事情を聞くや、監督はデジカメを手に、揉めている私たちの間に割って入ります。

監督「何やらご迷惑を掛けたようですが、施工前に周辺の建物の写真を撮っておきましたので、見比べながら被害状況を確認してみましょう。」

そして、ひび割れたという箇所と、デジカメの写真を見比べてみると、工事前の写真には既にひび割れがクッキリと映っていました。

隣家の奥様「これ本当に工事前の写真なの?」

監督「違うアングルもありますよ、古屋が映っているヤツ」

監督は次々と写真を見せながら、「これは最初からみたいですね。普段から外壁を注意深く見ている人は少ないですから!」との笑顔の決め台詞に、奥様は完全に沈黙します。

『監督!スゲェ~!』と思ったのですが、後々聞けば解体前の写真撮影は基本中の基本であるとか。

大変勉強になりました。

こうした事件をクリアーしながら、ようやく物件は更地へと戻ります。

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建物プランの決定

さて、物件が更地となれば、次は建築する建物のプランを固めなければなりません。

今回は3階建2棟を建築することになりますが、間取りは「物件の売れ行きを大きく左右する重要な要素」となりますから、しっかりとプランを練り込む必要があるでしょう。

なお、私の会社は建築会社を持っている訳ではないので、社長が昔からお付き合いのあるハウスメーカーさんに工事はお願いすることになります。

この会社、社員として設計士さんを抱えてはいるのですが、「参考までに」と提案して頂いた間取りのプランは今ひとつの出来栄え。

もちろん、世間にはスキルの高い設計士さんはたくさんいるのでしょうが、私の知る限り、「売れる間取り」を提案してくれる設計士さんは意外に少ない様に思えます。

やはり、不動産屋さんと設計士さんでは、間取りを見る「目線」が少々違うのかもしれません。

ただ、これからお世話になるハウスメーカーの設計士さんにあまり注文を付けるのも「申し訳ない」ので、自分で間取りを考えることにしました。

「出来る限り収納のスペースをとり、LDKを広く、そして居室は南側に・・・」なんて欲張って間取りを練って行きますが、これが相当難易度の高い作業。

先輩社員からの意見なども取り入れながら、どうにか商品化出来そう間取りに辿り着きました。

後はこのプランを再び設計士さんに投げて、建築基準法などに照らし合わせて問題がなければ、建築確認の申請をお願いすることになります。

 

地盤調査と地盤改良

こうして建築確認の申請が完了したら、次に待っているのが地盤調査・地盤改良という仕事です。

この工事は建物が不等沈下(地盤沈下)を起こさない様に、地盤を補強するのが目的となりますが、まずは地盤の強さを調べなければなりませんから、専門の業者に調査の依頼をします。

※地盤調査・改良の詳細に関しては過去記事「地盤改良の工法と種類について解説致します!」をご参照下さい。

そして調査の結果と共に、必要な地盤改良工事の内容と見積もりが出て来ますから、後は工事を進めるのみです。

但し、結果によっては、想定を遥かに超える規模と費用の地盤改良工事を行わなければなりませんから、見積もりを開く瞬間はかなりドキドキなのですが、今回はそれなりの工事内容とお値段で済むとの報告でした。

ホッと胸を撫で下ろしながら、早速発注して、工事をお願いします。

因みに私は、この段階でもまたまた「ミス」を冒してしまいました。

今回の地盤改良は柱状改良という、コンクリートと土を混ぜた柱を地中に作る作業となります。

この工事では、ドリルで地面を掘り返しながら、土とコンクリートを攪拌して行くのですが、何と現場にはコンクリートを混ぜるのに使う「水」、つまり「水道の設備」が無かったのです!

慌てて水道屋さんを手配して、「工事用の仮設水栓」を付けてもらいましたが、地盤改良工事の業者さんにはかなりのご迷惑を掛けてしまいました。

こうして、どうにか地盤改良まではクリアーとなり、いよいよ建物の建設が始まります。

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建売施工管理のまとめ

前回に引き続き、私の「建売はじめて物語」をお送りして参りました。

当時のメモなどを見ながら、起こった事件を思い出して書いているのですが、「本当に様々なトラブルに見舞われているな・・・」と我ながら思わず感心してしまいます。

現在ではトラブルに繋がりそうなことは、ある程度事前に察知出来るようになりましたが、この時は全てのトラップに引っ掛かっていた感じです。

なお、私の場合は一年に僅かな棟数の現場を担当するだけですが、大手の建売屋さんともなれば一人で年間50棟なんてこともあるようですから、これには本当に頭が下がります。

さて私の建売体験記も、ようやく建物の建築の段階に入って参りました。

次回は「建売の建築確認取得から完成まで!初めての戸建分譲③」という記事をお届け致しますので、ご興味がある方は是非お付き合い頂ければ幸いです。