建売の土地仕入

 

不動産屋さんの業務の中でも、「経験する人」と「経験しない人」がくっきり分かれるのが「建売」という事業に係る仕事であると言われています。

「建売」という名が示す通り、土地を購入して、建物を建てて転売するのがこのビジネスの『肝』となりますから、「お金のある企業しか参入出来ないのでは?」と思われがちですが、実はそんなこともありません。

過去記事「建売会社を取り巻く現状について」でもご説明致しましたがが、銀行も建売事業に対しては積極的に融資をしてくれますから、設立から数年、社長一人なんて会社でも、場合によっては参入が可能な事業となります。

しかし、借り入れる金額も大きいですし、販売後に背負う責任も重いため、例え資金力はあっても「建売はやらない」という会社さんも多く、こうした事情から不動産屋さん同士の間でも「建売屋さんは少々異質な存在」と見られてしまうことが多いようです。

因みに私が勤める会社はと言えば、業界でも非常にレアな「仲介も建売もバランス良くやる企業」であり、年に1~2現場くらいは建売を担当することになりますから、「建売屋さんの仕事もある程度は判っている」と自負しております。

そして同じ業界の仲間とお酒を飲んでいたりすると、「建売屋の仕事ってどんななの?」なんて質問もよくされますから、一度は建売の仕事について記事を書いてみたいと考えておりました。

そこで本日は、私が業界に入りたての頃に体験した建売用地の仕入れから、販売完了までの流れを体験記風にレポートした記事をお届けしたいと思います。

なお、少々お話が長くなりそうですので、何回かに分けてお届けすることをご容赦頂ければ有り難いです。

では建売の土地仕入から、建築開始までの流れの知恵袋を開いてみましょう。

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仕入れまでの流れ

私が勤める会社は東京の片隅ながら、それなりに栄えた駅の近くに店舗を構える小さな不動産屋さんで、従業員は売買・賃貸を合わせて常に6~7人が在籍しています。

事業内容としては特化しているジャンルもないのですが、社長の「売り上げになるならどんな仕事でも引き受けろ」という拝金主義のために、売買担当である私は仲介から建売、投資物件の買取・売却はもちろん、時には賃貸管理まで幅の広い仕事を押し付けられています。(現在入社15年目)

そんな私が初めて建売の現場を担当することになったのは、会社に入って4年目くらいの頃でした。

その当時の私は、売買仲介の仕事こそ数件経験しているものの、簡単な取引でも先輩に何度も質問をしながら「どうにか仕事をこなしている」状態。(入社した際は賃貸担当であり、1年程前に売買担当に転属させられたばかりでした)

よって、「自分に建売の現場担当なんて10年早い」と勝手に決めつけ、用地の仕入れについては積極的な営業をせずにいました。(社長命令で「用地あったら紹介して下さい」という台詞を挨拶代わりに発する程度)

そしてその日も、毎朝の様に朝のレインズチェックなどをこなしていたのですが、不意に携帯へ知り合いの不動産会社さんからの着信が舞い込みます。

慌てて応対してみると「出たよう、建売用地!」とのお言葉。

「あんな営業で仕事が入って来るなんて・・・」と少々驚きながらも、早速、事務所にお邪魔して、物件の資料を頂き現地へ下見に行きます。(当時はまだ、建売用地の仕入れも楽だった)

但し、この段階では「売りたいとの相談だけ」ということなので、物件を外からチラチラと確認する程度してくれとのことでしたので、慎重に下見を行いました。

物件のスペックとしては、間口10mの奥行き13mの整形地(130㎡)、駅から徒歩10分程という立地に、築50年という古家が建っています。

近隣は3階建ての建売物件が多い地域ですから、間口5mで2つに切れば、65㎡ずつ2棟の建売を計画することが出来そうです。

早速、会社に戻り社長に話したところ、これがノリノリの反応!

「直ぐ買おう!今買おう!」とはしゃいでおりました。

「では、購入に向けて契約の段取りを・・・」と動き出そうとすると、先輩社員から『しっかり試算と物件調査をしないと不味いぞ!』とのご忠告。

そうです、当然ながら購入する前に事業内容の精査や、物件の調査を行わなければなりません。

通常の仲介と同様に現地調査行政調査を終え、事業計画の試算を進めて行きます。

まずは近隣の相場を調べ、「65㎡の3階建の建売がいくらくらいで売れそうか」を調査。

土地の値段に、仕入れの仲介手数料や建物の建築費、建築確認代、解体費に、完成後に掛かる販売の仲介手数料などを予測して計算を続けます。

結果、一棟に付き250万円くらいの利益が見込めるとの結果を社長に報告しますが、「それじゃあダメだ!」とのご回答。

『あんなにノリノリだったクセに・・・』と文句を言いながら、経費を削ってみたり、販売予定価格などを調整して行きます。

ここでようやく、一棟あたりの利益を280万円まで膨らませることが出来ましたが、これでは社長の承諾は取れそうにありません。

仕方なく物件の購入価格を少し減額し、どうにか一棟300万円の利益確保で、社長のOKを頂くことが出来ました。

早速、「買付証明書」を物件を紹介してくれた仲介業者さんに送り、返事を待つことにします。

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契約・決済

数日後、ようやく仲介業者さんより連絡があり、提示した金額で売主さんが契約に応じてくれるとのことでした。

どうにかお話がまとまりそうな気配にホッとするのも束の間、今度は契約内容の交渉を開始します。

売主さんは自宅である物件を売り払って、分譲マンションを購入されるという中年の女性。

売買金額については既に合意が取れていますが、新居に持って行けないタンスや荷物は処分してもらいたいとのご要望があるようです。

「あれれ、荷物の処分費までは試算に入れてないぞ・・・」と一瞬焦りましたが、ここは買わせて頂く訳ですから、我慢するしかありません。

また、こちらからの要望は、土地の「確定測量」を売主さん側でお願いしたいというもの。

確定測量とは、土地の接する「民間の境界」全てと、道路に接する「官民の境界」を確定してもらうという内容となりますが、実際には土地家屋調査士に依頼して、近隣の方と『お互いに境界はここで間違いない』という旨の「確認書」を交わしてもらう作業を指します。

この確定測量が出来ないと、土地を2つに切ること(分筆)自体が出来なくなってしまうため、契約書上も、確定測量が出来ない場合には「契約は解除出来る」と謳っているのです。

因みに購入した後から、見ず知らずの不動産屋さんが「境界の立会いをして下さい」といっても、相手にしてもらえない可能性が高いので、売主さんの責任でお願いすることが殆どとなります。

こうした条件を互いにクリアーしながら、無事に契約は成立。

後日、私の会社が購入資金の借り入れをする銀行にて、決済・引渡しを行いました。

売買代金の支払に、固定資産税の精算などを終え、ようやく物件の鍵を頂きます。

さあ、いよいよ建売の商品作りの始まりです。

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土地仕入まとめ

さてここまでが、建売用地仕入れ体験記の第一回目となります。

こうして文章にすると「サラリとお話が進んでいる」ように感じられるかもしれませんが、如何せん初めてのことばかりですから、その裏には様々な苦労がありました。

不動産業界の場合、判らないことがあっても先輩方はなかなか教えてくれません(自分の仕事で手一杯のため)し、当時は今ほどインターネットで閲覧できる情報も多くなかったので、とにかく情報に飢えていたのを憶えています。

なお、物件の引き渡し条件に関しては、実は「荷物の処分」以外にも様々な無理難題を吹っかけられました。

「不動産屋さんが買うからには、一般の方が買うよりかなり安くなっているのだろう」という売主さんのお気持ちがこうした条件交渉に繋がっていたのでしょうが、今時の建売用地買い取り価格はそれ程安いものではありません。

また、今回のように130㎡(約39坪)と土地が大きい場合は、一般の方が買い辛い大きさ(通常、大きな土地でも30坪あれば十分な広さなので)となりますから、価格が若干安めになるのは致し方ないことなのですが、その点を今一つ売主さんにご理解頂けなかった様です。

※土地の面積による単価の変動については別記事「不動産の土地面積のお話!」にて詳しく解説しております。

そして、こうした誤解を生まないよう「自分が仲介業者の立場の場合には、しっかり売主さんのフォローをしなければならないのだぁ・・・」ということを、改めて思い知らされました。

さて次回は、古屋の解体と建物の建築編となる「建売施工管理の様子をご紹介致します!」という記事をお送りします。

ご興味がお有の方は是非ともお読みになってみて下さい!