任意売却購入の流れ

 

不動産の仕事をしていると、時折耳に入って来るのが任意売却の案件です。

任意売却は、競売に掛かる寸前の物件を任意で売却するという取引形態となりますが、少々「特殊な案件」であるため長年不動産屋さんをやっていても、一度も経験がないという方も多いのではないでしょうか。

実は私も、これまで数回しか経験したことがないのですが、任意売却に対する世間の関心は非常に高い様なので、取引の模様を体験記という形式で記してみたいと思います。

なお、普段から任意売却に慣れている方には退屈な記事となってしまうかもしれませんが、お付き合い頂ければ有り難いです。

では、任意売却購入の流れの知恵袋を開いてみましょう。

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任意売却とは

ではまず最初に、「任意売却とは何であるか」という点からお話をスタートさせましょう。

冒頭でも述べた通り、任意売却は借入れの返済が滞ってしまい、「もはや競売直前」と言う段階で行われる売買の形式となります。

この状態ともなると、物件に関する主導権は債務整理を担当する管財人(弁護士)が握っている状態となりますが、競売にお話が進む前に、「債務者たちが納得出来る値段で、物件を買ってくれる人はいないのかな?」と任意で買い手を探し始めるケースが時折あり、ここが取引の入り口となるのです。

なお、この様な状態の物件には複数の金融機関、時には怪しい金融屋までもが抵当権を設定していることが多く、債務者が5人、6人なんてことも珍しくはありません。

そして債権者が多数存在するだけに、貸出されているお金の額もかなりのものとなっていますから、どんなに高値の買い手がついても、貸付額の全額が債権者たちに弁済されることはまず有り得ないのが現実です。

但し、そんな債権者たちもプロですから、それぞれが「●●万回収できればOK」という妥協のラインを用意してくれていることが多く、買い手が見付かった際には債権者たちと交渉の末、ある程度の金額で話し合いがまとまることも少なくありません。

因みに、この任意売却の話し合いが不調に終われば、物件は競売に掛けられることとなりますが、競売で落札されるよりも、任意売却で現金化した方がより多くの弁済を受けられる可能性が高いですから、想像以上に協力的な債権者が多いというのが率直な印象です。

 

初めての任意売却案件

そんな任意売却の案件が、私の元に転がり込んで来たのは8年前の春のことでした。

その頃は、既に不動産屋さんの社員になって5年目くらいの時期でしたから、ようやく仕事の面白みが解って来たというタイミング。

事務所の電話が鳴り、応対したところ相手は会社の顧問弁護士K先生でした。

K先生「任意売却の案件があるのだけど、お宅でやれる?」

正直、任意売却のことなど殆ど知らない状態だったのですが、ここは意気込みが大切ですから「是非やらせて下さい!」と答えました。

後日、先生の事務所に伺って案件の詳細をお聞きしましたが、対象物件は東京都内の一軒家であるとのこと。

土地は30坪程であり、築10年の二階建てが建っている中古戸建でした。

売主(債務者)は今もなお、この物件に住み続けているとのことでしたから、弁護士の先生から事前にご連絡を入れて頂いた上、物件調査を兼ねてご挨拶に向かいました。

競売寸前の物件の所有者とのことでしたので、「さぞや負のオーラ満載の方なのでは・・・」と少々ビビリながら訪問しましたが、意外に明るい普通の中年男性が私を迎えてくれます。

ひとしきりご挨拶をして、今後の流れについてご説明した後は雑談となりましたが、今回のような事態に陥ったのはギャンブルが原因である模様。

その転落の軌跡を延々お聞きし、「やはり明るい笑顔の裏には深い闇があるのだな・・・」というのがこの時の印象でした。

とは言え、お仕事はお仕事なので早速「買い手」の募集を始めますが、築年数はまだ10年と新しいものの、それなりに建物は痛んでいましたので、エンドユーザーより不動産会社に卸す方が安全と判断し、営業活動を開始します。

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そして、それ程時間を掛けることなく、それなりのお値段でお客が付きましたので、ここからいよいよ売却に向けてのアクションを開始します。

まず行ったことは、登記簿謄本に記載されている債権者たちに連絡を入れること。

連絡窓口は弁護士の先生が調べておいてくれましたので、スムーズに電話を掛けることが出来ましたが、初めての作業にかなり緊張したのを憶えています。

一番抵当、二番抵当と連絡を入れ、「どれくらいの弁済を受けられれば任意売却に応じてもらえるか?」のご相談を続けて行きます。

基本的には、一番→二番→三番と抵当権の順位が高い順に優先的に弁済が受けられるシステムとなっているのですが、債権者たちも「何番抵当で●●●万円貸していれば、●●万円回収」という目標額が存在しているらしく、ここまでは苦労なく話が進んで行きました。

しかし、四番抵当の地方銀行は「うーん、売買金額が安過ぎるね・・・」と難色を示し、会議で応じるか応じないかを判断すると伝えて来たのです。

例え四番目の抵当権者でも、ここで「ダメ出し」を喰らうだけで物件が競売掛けられてしまうのですから、やはり世の中は厳しいもの。

ドキドキしながら連絡を待っておりましたが、「金額の面の問題で任意売却には応じられない」との無情な知らせがもたらされます。

ただ、ここで引き下がる訳にも行きませんので、「いくらなら応じてくれるのか?」という質問を投げ掛けた上で、買主さんに購入金額の買い上がりを要請。

そして実に幸運なことに、承諾してもらうことが出来きました。

こうして条件が整えば、各債権者に売買価格の返済案分表を送付し、改めて弁済額の確認を取った上で売買契約にお話は進みます。

 

契約・決済

売買契約書の作成に関しては、特に通常の取引と変わりがなく、スルリと完成。(売買契約書の作り方については別記事「不動産契約書作成のポイントを解説!」をご参照下さい)

ただ、唯一問題なのが売買の際に受け渡しされる手付金の処理でした。

売主さんがお金に困っているのは明らかですから、通常の売買のように手付金を現金で渡せば返済などに使ってしまうのは必定。

手付金も含めた売買代金全額を債権者たちに配分しなければなりませんので、これは絶対にあってはならないことなのです。

そこで、手付金は仲介業者である私の会社が引渡しまで預かる旨の覚書を交わして、売買契約は完了しました。(これを手付預かりと言います)

こうして契約が完了したならば、契約書のコピーを各債権者に送り付け、抵当権解除に向けて準備をしてもらうように打診します。

さて残るは、売主さんの引っ越し先を探すという作業です。

破産者ということで、なかなか借りられる賃貸物件も限られていましたが、親類に保証人となってくれる方が居たため、何とか新居も確保。

そして、いよいよ決済に日を迎えます。

決済の会場となったのは、売主さんが懇意にしている銀行さんの応接部屋でしたが、5番抵当まで付いていたので、抵当権の抹消書類を持った債権者が5人同席。

普段であればトークで場を盛り上げようとするのですが、債権者の皆さんは淡々としたご様子でしたので、かなり緊張したのを憶えています。

その上、5番抵当の債権者は、電話では親切な対応をしてくれたものの、お会いしてみれば見た目は完全に「あちらの方」。

相当ドキドキしながら決済の手続きを行うハメになりましたが、どうにか無事に引渡しを終えることが出来ました。

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任意売却まとめ

さてここまでが、私が初めて経験した任意売却の案件の体験記です。

以降も何度か任意売却の取引をしましたが、中には「競売以外は認めない」と豪語する銀行さんも居られ、取引が不調に終わるパターンもありました。

弁護士さん等と太いパイプを持っていれば、こうした任意売却の案件がガンガン入ってくるようですが、生涯経験することの出来ない不動産屋さんも少なくとのことなので、初めて取引に臨むという方は、是非私の体験記をご参考にして頂ければと思います。

ではこれにて、任意売却購入の流れに関する知恵袋を閉じさせて頂きたいと思います!