インスペクション

 

不動産売買の市場において、大きなウェイトを占めているのが中古物件の取引です。

マイホームの購入などに当たっては、予算の問題から中古住宅の購入を余儀なくされる場合も多いでしょうし、購入エリアに強いこだわりがあれば「いくら待っても新築物件が出ないから、中古を買わざるを得ない」という方もおられるはず。

もちろん、新築には新築の、そして中古には中古なりのメリット・デメリットが存在しており、一概に「どちらが良い」とは判断し難いものがありますが、ここで問題となるのが「中古戸建」に関する事項です。

過去記事「新築・中古どっちが得か?について解説します!」でも申し上げましたが、分譲マンションは例え中古でも、雨漏りや建物の躯体に関する部分が共用部分となっているため、購入後のトラブルは非常に少ないのが特徴。

これに対して中古戸建は、建物の管理を全て個人が負担しなければならない上、劣化の状況について売主も把握していないことが殆どであるため、雨漏りや躯体の腐食等、後々問題が発生する確率が非常に高くなっています。

そして、こうした中古戸建の問題点は行政側も憂慮していたらしく、この程「既存住宅のインスペクション・ガイドライン」なるものが発表されました。

そこで本日は「インスペクションとは?不動産取引の新たな潮流を解説します!」と題して、このインスペクションという考え方についてお話してみたいと思います。

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インスペクションとは?

冒頭で申し上げた「インスペクション」という言葉に聞き覚えがあるいう方は、非常に少ないことと思います。

インスペクションとは英語で、点検、検査、監視などを表す単語であり、不動産業や建設業などでは「住宅の性能評価」や「施行管理」という意味で使われて来た言葉です。

これまでも新築物件の建築などに際して、建売業者や建築会社のスペックに疑問を持つ買主が、建築士などを雇い、施工状況を確認するという意味での「インスペクション」は行われて来ましたし、不動産業者が売主となる中古物件では、瑕疵保険に加入する目的での検査が実施されて来ました。

しかしながら、個人が売主となる中古戸建においては、こうしたインスペクションは滅多に行われない上に、検査を行う業者の点検個所や評価基準もバラバラであるという点が問題視されていたのです。

そこで政府は、この中古住宅の検査に対して一定のガイドラインを設け、市場に流通する中古住宅の品質向上と、売買後のトラブル防止を図ろうと考えます。

こうして誕生したのが「既存住宅のインスペクション・ガイドライン」であり、このガイドラインを基に中古戸建の売買に様々な変化が起こり始めているのです。

 

国交省のガイドライン

さて、この「既存住宅のインスペクション・ガイドライン」が巻き起こす中古戸建て売買の変化をご紹介する前に、まずはこのガイドライン自体がどの様な内容であるかについて、ご説明しておきましょう。

住宅業界におけるインスペクションは大きく分類して、3つのフェーズがあるとされています。

その3種とは、一次インスペクション・二次インスペクション・性能向上インスペクションであり、

  • 一次インスペクション(基本的な建物の問題点・性能の評価)
  • 二次インスペクション(改築工事を前提とした詳細な調査)
  • 性能向上インスペクション(耐震補強・省エネ住宅化・バリアフリー住宅化など、性能アップの工事のための調査)

という、目的による分類が定義されているのです。

なお今回発表されたガイドラインは、一次インスペクションを対象とした内容となっており、基礎や柱、屋根に外壁、配管などに至る建物全般に対して、「シロアリの被害」の有無や「腐食」の有無、「防水処置」の劣化具合、「配管の漏水」の有無などチェックポイントを定めた上、検査方法についてまで基準を設けています。

これならば、どこの検査業者に依頼しても「検査のチェック漏れ」や「曖昧な検査結果」が出ることも無くなるでしょうし、中古住宅を購入する側の安心感も高まりますよね。

そして、このガイドラインを完成させた国土交通省は、その基準を元に実際の「中古戸建取引の方法」についても様々な改正を推し進めています。

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宅建業法も改正・保険制度の充実

では、実際に今後の中古戸建取引がどの様に変わって行くかについて、お話して行きましょう。

ガイドラインを完成させた国土交通省が次に着手したのが、宅地建物取引業法の改正です。

既に国会ではインスペクションに関する内容を含む改正案が可決されている上、平成28年6月には公布も完了。

法令は公布後、2年以内に施工されるルールとなっていますから、実際の取引においてもインスペクションに関する事項が反映されることになります。

なお実際の変更点としては、中古住宅の売却に際して売主が不動産業者と締結する「媒介契約」において、業者は売主にインスペクションを受けるように勧める義務が発生。

そして買い手が現れた際には、重要事項説明に際してインスペクションにて判明した建物の問題点や評価を報告しなければならない上、売主・買主立合いの下、インスペクションの結果を現地で確認するルールとなっているのです。

因みにインスペクションを受けるためには5万円~10万円程度の費用が発生しますから、売主にこれを強制することは出来ませんが、

買主が物件を選ぶ際、「インスペクションを受けているか、否か」は購入の意思決定の大きな要素となって来るでしょうから、近い将来には検査を受けている中古住宅が「当たり前」の世の中となるでしょう。

そしてインスペクションとセットで進められているのが、引渡し後に万が一建物にトラブルが発生した場合の瑕疵保険制度の拡充です。

既に中古住宅の瑕疵保険は存在しておりますが、より利用者を増加させるため、今後様々な法整備やメリットの提供が行われていくことでしょう。

なお、インスペクションに伴う瑕疵保険制度の詳細については、後日「インスペクションと瑕疵保険について解説致します!」という記事にて解説させて頂くつもりです。

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インスペクションまとめ

さてここまで、不動産業界、そして中古戸建売買の取引に大きな変革をもたらすであろうインスペクションについてお話して参りました。

この制度の普及については、今はまだ実感が持てないかもしれませんが、法改正の過程や制度整備の状況を見る限り、「国土交通省の本気ぶり」は相当なものと見受けられますから、間違いなく中古販売のスタンダードスタイルとなるはずです。

不動産業者としても、中古住宅の仲介は瑕疵担保に関して、かなりドキドキするものがありますから、こうした制度が定着してくれるのは嬉しい限りだと思います。

インスペクションがしっかりと普及し、売り手にとっても買い手にとっても安心して家が売買出来る時代が到来することを願うばかりです。

ではこれにて、「インスペクションとは?不動産取引の新たな潮流を解説します!」の知恵袋を閉じさせて頂きたいと思います。