賃貸特約条項

 

以前の記事において、賃貸借契約書の特約の書き方について、具体的な例文を挙げながらご説明をさせて頂きました。

特約と言えば、「個々の案件ごとにカスタマイズされた取り決め」というイメージが強いかもしれませんが、全ての契約に共通して付加すべき条項も少なくありませんので、前回の記事はそんな条文をターゲットにさせて頂いた次第です。

しかしながら、「それだけでは対応しきれない!」とのお声も数多く頂きましたがので、今回は特殊なケースに対応した例文集をお届けしたいと思います。

もちろん、「全てのシュチェーションに対応!」という訳には行きませんが、私の経験上、頻度が高く重要と思われる取り決め事項に狙いを絞っておりますので、様々なシーンにてご参考にして頂けるはずです。

では、賃貸特約条項の記載例・特殊ケース編を見て行きましょう。

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居住用の特殊な特約事例

居住用の賃貸借契約においては、それ程特殊な取り決めをする必要が無さそうにも思えますが、契約する相手も様々ですから、通常の雛形では対応しきれなケースも出て来るものです。

 

必要書類が未提出な場合の特約

本契約に際し、提出義務のある書類等が未提出の場合には、賃借人は●月●日までにこれを提出するものとします。また、提出なき場合には賃貸借契約を解除されたとしても異議を申立てません。

事前に何度も確認を行っていても、お客さんは忘れ物をしてくるもの。

それが賃貸借契約に必要不可欠な連帯保証人の承諾書だったりした場合には、そのまま契約を結ぶ訳には行きません。

本来であれば、書類が揃うまで契約を先延ばしにするのが望ましいのですが、引っ越しや仕事の都合でどうしても延期できない場合に利用する特約事項となります。

但し、一端入居させてしまう以上、それなりのリスクも伴いますので、この条項で対応する場合には、必ずオーナーさんに承諾を得てから契約を行うべきです。

 

引渡しが間に合わない可能性がある場合の特約

原状回復工事の遅れや、前入居者の退去日の変更等、貸主の責めに帰さない事情により本物件の引き渡しが遅滞する場合、貸主は速やかにこれを借主に伝えるものとし、借主はこれを承諾し、異議を申し述べないものとします。

春先の繁忙期や、人気物件については、新規契約の段階でまだ前入居者が居住中であったり、リフォーム工事が完了していないというケースも珍しくありません。

こうしたケースでは、前入居者が退去してみたら想像以上に部屋の破損が激しく、リフォームが引渡しに間に合わない場合や、解約予告日に前入居者が退去してくれないというパターンもあるものです。

そんな緊急事態に備えて、加えておくと非常に便利な文言となります。

 

建物の劣化が激しい場合の特約

本物件は老朽化が著しく、建物の部材、設備等に経年変化による劣化がみられます。借主はこれを承諾した上、本物件を借り受けるものとし、雨漏りやサッシの不具合など賃貸借契約締結の目的が達せられない場合を除き、建物の修繕要望を申し出ないものとします。

老朽化が進んでいる物件を貸し出す際に用いられる特約条項となります。

この特約を付加する目的は、建物が想像以上に劣化していることを借主に理解してもらうことと、老朽化を理由にした床の張り替えなどの工事要望を封じることが主な狙いとなるでしょう。

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保証会社を利用する場合の特約

借主は本契約締結にあたり、貸主指定の賃貸保証会社に加入する義務を負います。なお、加入済みの賃貸保証会社が倒産等の事情により保証能力を喪失した場合には、借主は改めて貸主が指定する保証会社への再加入若しくは、貸主の承諾を得られる連帯保証人の擁立を行うものとします。

保証会社の記事でもお話しましたが、現在では賃貸保証会社が倒産するケースが珍しくありません。

こうしたリスクに備え、保証会社の変更、並びに新たな連帯保証人の擁立を義務付ける特約を付加するべきでしょう。

 

フリーレント用特約

契約期間の取り決めに係らず、本物件の賃料は、貸主・借主の合意により平成●●年●月よりの発生するものとします。

最近流行のフリーレントを行う場合にも、一定の取り決めは行っておくべきでしょう。

「●月分から▲月分の賃料を無料にする」とは書かず、例文の様に賃料発生月を遅らせるのが通常です。

 

敷金無し物件の特約

本契約において、借主は敷金の預け入れを行いませんが、借主の原状回復義務等が免除された訳ではありません。

こちらは最近増えつつある、敷金0ヶ月物件用の特約となります。

敷金が無いと聞くと、「原状回復義務も免除される」と思っている入居者が意外に多いものですから、こうした文言を入れておくのが正解でしょう。

 

造作買取請求権の禁止特約

借主は本物件に付加した造作について、貸主に買取請求を行うことは出来ないものとします。

民法は、借主が建物に付加した「造作物」に関して、物件の価値が向上したことを要件に、貸主への買取請求が行える旨を謳っています。

よって、賃借人が和室の畳を高級な琉球畳に取り換えてしまった等のケースでは、貸主は畳を時価で買い取らねばならなくなるのです。

これに対抗するには、例文にてご紹介した「買取請求の禁止特約」を契約書に入れておくのがベストでしょう。

因みに、造作買取請求権が行使出来るのは、貸主の許可を得て造作を設置した場合となりますし、エアコンについては判例上「造作ではない」とされていますから、買取を行う必要はありません。

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特殊特約条項まとめ

この様に居住用のお部屋を賃貸するだけでも、状況次第で付加しておくべき特約事項が多々あるものです。

賃貸の仲介を行っていく当たっては、大家さんや借主の事情、そして物件よっても様々な特約を作成していかなければなりませんから、困った際には是非今回の例文をご参考にして頂ければと思います。

なお、他社が作成した契約書にじっくり目を通してみると「この特約は是非、自分の契約書にも入れておきたい!」なんてことも多いですから、こうしたチャンスを逃さず、しっかりとノウハウの蓄積を図りたいところです。

ではこれにて、賃貸特約条項の記載例をご紹介致します!(居住用・特殊ケース編)の知恵袋を閉じさせて頂きたいと思います。