賃料滞納時の強制執行

 

収益物件の運用を行っている方にとって、最も気になるは毎月の賃料収入に関することかと思います。

物件の購入や建物の建築にローンを利用されている方ついては、空室が増え過ぎれば、毎月の返済に「自分の預金を切り崩さなければならない」なんて状況も有り得ることですから、これは正に危惧すべき問題です。

また単なる空室であれば、新たな入居者が決まればそれで済むことですが、賃料の未払いなどにより資金繰りが圧迫されるのは、とても我慢できませんよね。

過去記事「賃貸滞納の督促テクニックをご紹介致します!」では、こうした賃料滞納トラブルを解決するための督促テクニックをご紹介致しましたが、こうした技を用いても解決出来ない案件については、法的手段を執るしか方法がありません。

そこで本日は「賃料滞納時の強制執行までの流れを解説!」と題して、賃料滞納による物件の明け渡し訴訟、そして強制執行に至るまでの流れをご説明して行きたいと思います。

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強制執行までの準備

では具体的に、物件の明け渡しまでの道程をご説明して行きたいと思いますが、強制執行に至るまでにはそれなりの準備が必要となります。

そもそも強制執行とは、個人間の紛争においてどうしても解決出来ない事柄について、国家権力が介入する制度であり、

その強制力は非常に強いものとなるため、厳格な法的根拠と手続きを必要としているです。

そこで手に入れなければならないのが、「債務名義」、「執行文」、「送達証明」の三点です。

但し送達証明については、間違いなく相手方に強制執行を通達した旨の証明に過ぎませんし、執行文は現在も強制執行が行える状態にあるという裁判所のお墨付きとなりますから、その取得にそれ程手間は掛かりません。

これに対して「債務名義」は、裁判所が明け渡しを命じる判決であったり、調停による合意内容を覆された事実が発生しなければ、手に入れることが出来ませんから、如何に債務名義を手に入れるかが最大の難関となる訳です。

因みに「債務名義って何だろう」という疑問をお持ちの方も多いと思いますが、簡単に言えば「強制執行を行うための根拠」を指す言葉です。

例えば立ち退きを請求した裁判を起こし、勝訴を収めれば、裁判所より「立ち退きなさい」という判決が下ります。

もちろん、入居者が素直に判決に従えば強制執行などする必要はないのですが、判決に従わない不届き者であった場合に備えて「何時でも強制執行が行えるよう、債務名義付きの判決」を言い渡すのです。

また調停を例に挙げれば、裁判官立会いの下「今後は家賃を滞納せず、滞納したら退去する約束(合意)」を結んでいるのに、これに違反する訳ですから、こうした事態に対しても裁判所は債務名義を与えることになります。

なお、債務名義自体は以前に解説した「公正証書による賃貸借契約に違反した場合」や、「裁判所で手続きして行う支払督促を相手方が無視した場合」にも入手することが出来ますが、

こうした方法で得られる債務名義は「財産や家財に対する強制執行(差押え)」に使用目的が限られますから、これだけで明け渡しを断行することは出来ないのです。

よって、明け渡しの強制執行を行うのであれば、まずは「賃料の不払いなどを原因とした立ち退き訴訟を提起して、裁判で勝訴する」か、「民事調停で約束を破った場合には立ち退く旨の合意を得る」ことが必要となります。

そして「判決」や「調停での合意」に相手が従わない際には、債務名義を入手することが可能となり、後は裁判所で「執行文」を付けてもらった上、「送達証明証」を入手することで、いよいよ強制執行が可能となるのです。

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強制執行の断行

さてここからは、実際に強制執行を行う手順となりますが、まずは対象の物件が所在する地域を管轄する裁判所に出向き、強制執行の手続きを行います。

この手続きが完了すると、執行官と呼ばれる公務員と具体的な強制執行手順の打ち合わせが始まることになるでしょう。

「執行官」という名の通り、ここで打合せを行う相手は『執行を統括する者』となる訳ですが、彼らが直接物件内の荷物を搬出してくれる訳ではありません。

実際の作業は「執行補助者」と呼ばれる業者が行うことになるのですが、この業者は執行の申立てをする本人が手配するルールになっています。(もちろん業者の利用は有料となり、費用は申立人負担です)

なお、執行補助者に心当たりがない場合には、執行官に申し出れば「業者の紹介をしてもらうことが可能」です。

そして実際に執行日(断行日)が決定すれば、その一ヶ月以上前に「明け渡しの催告」というイベントが待っています。

これは執行官と共に物件に赴き、相手方に強制執行による退去が行われる旨を通知するというものですが、通知を貼り出す場所は物件内部となりますから、合鍵がない場合などは鍵屋の手配も必要でしょう。

因みに、この段階で予想出来るトラブルとしては、物件に出向いた際に、全くの第三者が物件を占有しているというパターンです。

こうしたトラブルは、強制執行を察知した入居者が執行を妨害するため、物件の「又貸し」を行った際に発生します。

こうなると、その第三者に対して改めて強制執行の手続きを行わなければなりませんので、これは非常に手間の掛かる作業となるでしょう。

そんなトラブルを避けるためには、強制執行前に裁判所に対して、「占有移転禁止の仮処分(又貸しを禁じる法的処置)」を行っておくことが必要ですから、この手続きも忘れずに手配しておくのがお勧めです。

そして断行日を向かえれば、執行官、執行補助者、立会人(こちらも執行官に紹介してもらえます)、大家さんにて、物件を開錠し、入居者の排除と荷物の処分を行うことになります。

ここで撤去した荷物は、一定期間倉庫などで保管した後、競売に掛けられることになりますが、実際に買い手が現れることはありませんので、大家さんが競落して、処分することになるでしょう。

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賃貸強制執行まとめ

さてここまでが、立ち退きの強制執行の具体的な流れとなります。

正式な手続きを踏めば、確実に物件を明け渡させることが可能となりますが、裁判費用や運搬費、撤去した家財などの処分費など、費用もそれなりに掛かる上、時間もかなり要してしまうのが現実です。

また、強制執行を前に絶望した入居者が自ら命を絶つというケースも多いですから、断行には細心の注意が必要でしょう。

因みに入居者が強制退去に刃向った場合には、最悪公務執行妨害で逮捕されるケースもありますし、「どうしても行く所が無い」という入居者に対しては、執行官が公営の宿泊所などを手配してくれる場合もありますから、

トラブルや最悪の結果を避けるためには、こうした制度を充分に相手方に説明しておく必要があります。

なお、大家さんの中には絶望した入居者が凶行に及ばないためのケアとして、物件管理を任せる不動産屋さんを介して、見舞金などという形で現金を渡す方もおられるようです。(あくまで不動産屋からの見舞金として渡すのですが)

「随分甘いことを」と思われるかもしれませんが、物件内で事故を起こされれば、その損害は莫大なものとなりますし、申立てをした本人が現金を渡すのもマズイですから、この方法はなかなか配慮の行き届いた対処と言えるでしょう。

ではこれにて、「賃料滞納時の強制執行までの流れを解説!」の知恵袋を閉じさせて頂きたいと思います。