公正証書の賃貸借契約

 

不動産の取引において、非常に重要なプロセスとされるのが「契約」というイベントです。

もちろん不動産以外でも、「自動車の購入」や「お金の借入」など、『契約』と名の付くものは重要なイベントばかりですが、金額の大きさやトラブルの頻度を考えると、不動産の契約にはより「重いウエイト」が課せられているように感じられます。

また、その中でも特に「借地契約」や「事業用物件の賃貸」は長年継続する可能性が高いものとなりますから、後々トラブルに発展し辛い契約方法を選択するべきですよね。

そして、こうした契約方法の話題となった際にしばしば耳にするのが「公正証書を使って契約をしてみては?」というご意見なのではないでしょうか。

そこで本日は「公正証書の賃貸借契約を解説致します!」と題して、知っていそうで知らない公正証書と不動産契約についてお話させて頂きます。

スポンサーリンク

 

公正証書とは何か?

では最初に、「そもそも公正証書って何だろう?」という点から、お話をスタートさせてましょう。

公正証書とは、大きな街でしばしば見かける公証役場において作成される「文書」を指す言葉となります。

公証役場には、「公証人」と呼ばれる元裁判官、元検事という経歴の公務員が在籍しており、彼ら立会いの下で作成された契約書や遺言書は、一般的に作られる文書とは異なる強い「証拠能力」や「強制執行力」を持つ公文書として扱われるのです。

つまりこの制度は、社会的な信用が高く、法律のプロフェッショナルである公証人が立会って文書を作成することにより、

当事者同士が「思って契約内容ではなかった!」、「解釈の違いがあった!」などの『後々の争い余地を生じさせない為のシステム』と呼ぶことが出来るでしょう。

 

公正証書の作り方

では実際に公正証書を作るとなると、一体どの様な手順を踏むこととなるのでしょう。

まず最初に行うのは、契約などを結ぶ当事者同士が揃って公証役場を訪れ、交わしたい文章の内容を公証人に申請するという作業となります。

公証人は持ち込まれた文書の内容に目を通し、「明らかに違法性がある内容」などが無いかのチェックを行い、時には一部に修正を加えてこともあるそうです。

但し、あくまでもこのチェックは法律家として目線で確認を行うだけですから、文書の内容自体に意見をすることはありません。

そしてこの確認が完了したら、数日間の作成期間を経て、申請した内容がそのまま公正証書に仕立てられることになるのです。

公正証書完成後は当事者が再び公証役場に出向いて、公証人立会いの下、実印・印鑑証明添付で署名・捺印を行い、契約終了となります。

スポンサーリンク

 

公正証書の特色

さて、ここで気になるのが、「こうして作成された公正証書には、一体どのような効力があるのか?」という点ですよね。

冒頭でもお話した通り、公正証書最大の特徴は「高い証拠能力」と「強制執行力」の二点となります。

証拠能力に関しては、契約ごとにありがちな「そんなつもりで契約書に判を押したつもりはない」などの言い逃れを、身分の確かな立会人を入れることで、防止する効力です。

そして「強制執行力」については、契約書などで約束された事柄について違反があった場合に、裁判を行うことなくして「強制執行の判決と同等の効力」を公正証書が発揮することとなります。

この様に記すると、公正証書さえあれば何の手続きをせずに強制執行が行える様に聞こえてしまうかもしれませんが、実務上は公証人に「契約違反があった旨」を申し出て、執行文の作成を依頼。

その執行文を裁判所に持ち込むことで、初めて強制執行が可能となります。

 

公正証書の賃貸契約について

ここまでのお話で、公正証書が如何に強い効力を持つ文書であるかがご理解頂けたことと思いますが、これが「不動産の契約」となるとどうなるのでしょう。

まず不動産の契約というと売買契約が真っ先に頭に浮かびますが、多くの売買契約は契約から決済までの期間が短い上、手付金や中間金などで取引上の事故防止措置を手厚く行っているため、公正証書を利用しなければならないケースが意外に少ないのが現実となります。

これに対して契約期間も長く、滞納などのリスクが高い賃貸借契約では、契約上の事故も多いため、公正証書が用いられる場合も多いようです。

但し、ここで注意が必要なのは「公正証書に強制執行力がある」とはいっても、それはあくまで『金銭に係ることのみである』という点となります。

仮に公正証書で行った賃貸の契約で、滞納が発生し、強制執行が行われたとしても、それは物件内や借主が所有する財産を差し押さえるというだけで、物件の明け渡しを行う目的での強制執行は行えないのです。

当然、賃料も払えない賃借人が豊富な財産を所有している可能性はあまり高くないはずですから、強制執行を行っても充分な債権の回収が出来る可能性はそれ程高くないことになるでしょう。

こうした点を考えると、公正証書を利用しての賃貸借契約は「内容に関する異議を生じさせない」、「契約に重みを持たせる」程度の意味合いしか期待できない可能性も大いにあるのです。

但し、事業用の定期借地権などの契約では、公正証書による契約が義務付けられたりもしていますので、こうしたシーンでは欠かすことの出来ない制度となるでしょう。(詳しくは「定期借地権とは?という疑問にお答えします!」の記事をご参照下さい)

スポンサーリンク

 

公正証書まとめ

さてここまで、不動産の契約と公正証書についてお話して参りました。

結論から申せば、「不動産の契約においてはあまり公正証書はその能力を発揮できない」ということになりますが、契約内容に後々トラブルに発展しそうな要素が含まれている場合には、非常に有効な契約手法となるはずです。

こうした制度の特性を正しく理解し、必要に応じて利用すれば、大切な資産を守り抜くのに大きな効力を発揮してくれることでしょう。

ではこれにて、「公正証書の賃貸借契約を解説致します!」の知恵袋を閉じさせて頂きたいと思います。