マンションの住人追い出し

 

我が国の住宅事情を語るにおいて、今や無くてはならないものとなっているのが、分譲マンションです。

戸建に比べて価格も手頃ですし、共用部分の管理・修繕は管理組合が面倒をみてくれるのですから、「手軽にマイホームを手に入れたい」という方には、正に打って付けの物件と言えるでしょう。

しかしながらその一方で、壁や天井、床を挟んで他のお宅と接することになりますから、騒音などが問題となることも多いですし、ガラの悪い区分所有者が住んでおり、「怖そうな方々が共用部分をうろついて困っている」等のクレームも耳に致します。

確かに分譲マンションならではのメリットも多く存在しますが、その反面「一つの建物を共有しているが故に発生するトラブル」が付き物なのも、分譲マンションの実態であると言わざるを得ません。

そこで本日は、「マンションの住人追い出しについて解説致します!」と題して、住人の和を乱す不届き者への対処方法を解説してみたいと思います。

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分譲マンションでのトラブルは増加している

冒頭にて「分譲マンションならではのトラブルが存在する」と申し上げましたが、実は年々こうした事例は増加傾向にあると言われています。

確かにテレビのワイドショーなどを見ていても、騒音おばさんやゴミ屋敷といった実に迷惑な輩を数多く目に致しますから、こうしたタイプの住人が壁を一枚挟んだ向こう側に住んでいた場合に、自分がどれだけの被害を被るかは、敢えて説明するまでもありませんよね。

なお、私自身もバルコニーに大量のゴミを溜め込んでいる住人や、昼夜問わず奇声を発するお隣りさんに悩まされているお宅の売却依頼を受けたことがありますから、これは決してテレビの中だけのお話ではないのです。

また、こうした日常生活で発生するトラブルの以外にも、管理規約で禁止されている飲食店経営を行っているケースや、酷い場合には部屋をキャバクラとして使用しているなんて事例まである模様。

更には、マンションの一室が暴力団事務所となっていたり、組長の自宅があり、毎日の様に組員が出入りしているという話も聞いたことがありますから、これは最早「最悪」と言わざるを得ないでしょう。

そして、こうした状況となってしまっては、もはや個人の区分所有者が一人で立ち向かうのは不可能となりますから、管理組合全体が一丸となって問題に対処するしか方法はありません。

では実際に、分譲マンションの管理組合はこうした厄介な住人に対してどの様な対処を行うことが出来るのでしょうか。

 

迷惑な住人への対処方法

分譲マンションの管理・運営を行っていく上で、欠かすことが出来ない法令が「建物の区分所有等に関する法律」、つまりは『区分所有法』と言われる法律です。

日本が抱える住宅事情の問題を解決するべく昭和37年に誕生したこの法律は、全部で72条という少ない条文数ながら、分譲マンションで発生する様々な揉め事やトラブルを解決してくれる心強い存在となっています。

実はこの区分所有法、施行当時はこうした住民同士のトラブルについて、「それぞれの区分所有者が、相手の行為に対して差し止め請求が出来る」という程度の内容しか定められていませんでした。

しかしながら、「行為の差し止め」だけではなかなか揉め事の解決には至りませんし、問題があくまでも「個々の住人同士の争い」となってしまうという弱点も存在していたのです。

そこで、昭和58年には区分所有法が大きく改正されることとなり、57条~60条の規定が追加され、マンション内で迷惑行為を働く者に対して、より厳しいペナルティーを課せるようになりました。

では実際に、区分所有法57条~60条の規定で行える厄介者たちへの制裁の内容を見て行くことにしましょう。

なお、ご紹介する対処方法は相手が「区分所有者」であるか、「区分所有者から物件を借りている賃借人」であるかによっても変わって来ますので、それぞれのパターンにて解説して行きます。

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相手が賃借人の場合

この場合に利用するのは区分所有法57条の定められた「行為の停止」と、60条の「占有者に対する引渡し請求」となります。

どちらの制裁も組合が裁判所に訴え出て、判決をもらわねばなりませんが、57条の「行為の停止」は総会での過半数決議のみで裁判に持ち込めますから、まずは「行為の停止」を求めた訴訟を起こすべきでしょう。

但し、この裁判で勝訴したとしても、行えるのは行為の停止のみになりますから、これだけでは問題が解決しない可能性もあります。

そして次なる手段となるのが、60条の「占有者に対する引渡し請求」です。

この請求についても裁判を起こす必要があり、今度は組合員の3/4の賛成が必要となりますから、「行為の停止」よりもハードルは少々高くなるのは必定。

しかしここで勝訴を勝ち取れば、部屋を貸している区分所有者や賃借人の意思とは関係なく賃貸借契約を解除することが出来き、賃借人を追い出すことが可能となるのです。

但し、対象の部屋の所有権はあくまで区分所有者にありますから、空いた部屋を即座に所有者へ返還しなければなりません。

 

相手が区分所有者の場合

では次に相手が区分所有者だった場合の対処法について、解説をして行きましょう。

最初に講じる手段は「賃借人の場合」でご紹介した『行為の停止』となります。

なお、これでも問題が解決しない場合には、58条の「使用禁止」を求めた訴訟を起こすのがベストでしょう。

因みに使用禁止の請求には、組合員の3/4の賛成が必要な上、相手の区分所有者には弁明の機会を与えなければならないルールとなっています。

弁明の機会については、総会などに呼び出して意見を述べさせれば済みますし、万一欠席した場合でも出席通知さえ受け取ったことが明らかならば、本人不在のまま議決を行っても問題はありません。

そして裁判で勝訴判決を勝ち取れば、一年などの期間、部屋の使用を禁止することが可能となるのです。

しかし、これでも問題が解決しない可能性も無いとは言えません。

そんな時には、59条の「区分所有権の競売の請求」を行うことになります。

こちらも総会での3/4の議決と、58条と同じく弁明の機会が必要ですが、裁判に持ち込み勝訴となれば、対象の部屋を競売に出すことが可能となり、区分所有者を強制的に排除することが出来るのです。

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分譲マンション住人追い出しまとめ

さてここまで、分譲マンションに出現した厄介者への対処方法を解説して参りました。

どの方法にしても、一度は訴訟を起こさなければならないという手間の掛かる方法ですが、それだけに効果は「てきめん」です。

なお実際の問題解決のコツとしては、『行為の停止』について過半数の議決を取れた段階で、「使用禁止や競売請求にも発展し得る」という今後の展開を相手方に説明して、プレシャーを掛けていくのがスムーズでしょう。

また相手が暴力団などの場合には、弁護士を代理人に立てて交渉に臨めば、自分の身を守ることが出来るはずです。

日々の平穏な生活を守り、集団生活の和を乱す者を排除するためにも、こうした制度は積極的に利用して行くべきだと思います。

ではこれにて、「マンションの住人追い出しについて解説致します!」の知恵袋を閉じさせて頂きたいと思います。

 

 

参考文献

自由国民社編(2015)『土地家屋の法律知識』自由国民社 864pp ISBN978-4-426-12021-4